福州雑記帳
・私の拙い経験に拠る独断的な内容で恐縮ですが、もしかすると少しくらいは何かお役に立つようなこともあるかと…。
1.自力で琉球館(柔遠駅)・琉球墓苑に行くには
(1)琉球館への行き方
琉球館・河口万寿橋・河口天后宮はお互いに至近距離にあり、しかも後二者の周辺には市場が広がるなど古き良き福州の面影を濃厚に残しています。市内のホテルに宿泊していて、どこか一箇所だけ琉球関係のところに行きたい方には、この三箇所をお薦めします。琉球館に自力で行くにはタクシーで「国貨西路の南公園」と言えば至近まで行けます。その後は地図を頼りに、あるいは周囲の人に住所を見せるか、「琉球館」・「柔遠駅」或いは「第二開関廠(琉球館のすぐそばにある税関の検査場)」と尋ねて、探してください。国貨西路から北に入る小さな袋小路の突き当たりが琉球館です。河口万寿橋と天后宮は琉球館のスタッフに地図を見せて場所を聞けば教えてくれるでしょう。琉球館を背にして国貨西路を横断し、小道に入った奥です。すぐに河があると思うのでその周辺を探せば見つかると思います。
*なお河口万寿橋の一帯は再開発が予定されています。こんな風景が見られるのも、あと僅かかもしれません。
(2)琉球墓苑への行き方
まず福建師範大学(師大)まで行き、その正門の向かいにある呂振万楼(師範大の招待所)の裏手(※この一帯を「対湖」と呼びます)にまわり、峰后路を師範大方面に向かって10分くらい歩いてください。見当たらなければ地図を見せて誰かに尋ねてみてください。なお師大(師範大)は、北京語(普通語)ではshi-daですが、福州では恐らくsu-da(スーダァ)と発音しないと通じません。タクシーなどに乗るときにはご注意下さい。
墓苑の扉には恐らく鍵が掛かっていると思います。あらかじめ旅行社や現地ガイドなどを通じてコンタクトを取っておくのがbetterですが、それをしていない時は門に向かって右側の民家に近付き、そこにいる人に墓に参詣したい旨を伝えてみてください。恐らく墓苑の世話人が出てきて墓を開けてくれ、線香なども用意してくれるのではないかと思います。なお、お世話になった場合は、この方に必ずいくばくかの謝金をお渡ししてください(※私は50-100元程度をお渡ししています)。墓内に賽銭箱等はありません。
2.福州あれこれ
(1)福州市内を移動するには
まず何と言っても福州は「広い」です。車を使わないことにはどうにもなりません。そして街も、全容が把握しづらい構造をしています。地図が無いことにはどうにもなりません。というわけで「ホテルや書店で市内地図を入手」+「交通機関の把握」が移動の大原則です。地図は、大きなホテルには大抵売っています(サービスで無料でくれることもあります)。路線バスのルートは市内地図に書いてありますが、バスでの移動は慣れていない方にはちょっと大変です(※参考までですが、省政府前から師範大の方まで市内を南北に横切る「20路」というバスは福州の「JR中央線」的存在で便利です)。短期の旅行者にとって移動で最も便利なのは当然のことながらタクシーです。市内中を走っているので見つからないということはまずないでしょう。メーター制です。最近は石油高の影響とかで、メーター料金+1元を請求されます(※車内に小さな張り紙があります)。ボラれているわけではありませんのでご留意ください。バイクタクシーもありますが、こちらは値段交渉制です。輪タクはありません。
「広い」と言っても旧省城内はなんとか歩ける距離ですので、とりあえず旧省城の中心付近(例えば「東街口」・「文廟」など)へタクシーで行き、そこから地図を頼りに足を伸ばせば城内の史跡(往時の衙門跡など)には辿り着けます。ただあまり(または殆ど・全く)往時の面影を残していない史跡が多いので、目的地を見つけるのはけっこう骨かもしれません。
(2)福州の気候
福州は閩江の奥にひっこんでいるので、廈門などと違ってあまり「沿海」の雰囲気はありません。どちらかと言うと内陸的な感じです。ベストシーズンは春か秋です。
福州の夏は高温「超」多湿です。調査には向かないかもしれません。なお現地の人には昼寝の習慣があります。13:00-15:00あたりは店なども閉まっていることが多いです(※特に夏)。
冬も年によってはけっこう(人によっては「かなり」)寒いです。暖房設備が貧弱なのでよけいそう感じます。南方なので防寒対策は忘れられがちですが寒がりな人は注意しておいた方がよいでしょう。それと当然のことながらホッカイロやうがい薬などは売っていません。
(3)福州の食事
福州料理の特徴は「甘い」ことだと一般に言われています。確かに甘辛系の味付けが好まれる向きはありますが、日本人としてそんなに気になる程ではないと思います。基本的に食材には野菜や魚介が多く、油は少なめ・薄味で(但し中国にしては)、全く辛くなく、日本人の口には合うと思います。ただ広東料理のような洗練された感じはあまりないです(※私がそういうものをあまり食べなかっただけかもしれませんが)。
ちょっと注意したいのは多くの料理に大量に入っている貝です。時々状態の悪いものが混ざっているので、火が通っているからと言って油断しないで、変な味がしたりしたら飲み込まないでおきましょう。また閩江の魚は鋭い小骨が多いです(※海水と淡水の混ざったところに生息しているせい?)。こちらも間違って飲み込まないようにしてください。現地の人たちもかなり気を遣って食べています。外国料理のレストランは、西洋料理・日本料理・韓国料理・タイ料理などがあります。
なお一応、筆者の知っている福州の代表的な料理を挙げておくと、以下のような感じです。
・仏跳牆:高級海産乾物類・肉類・野菜・漢方食材など数十種の食材をスープと共に壷に入れて密封し、長時間蒸して仕上げた最高級スープ料理の一つ。名前の由来は「そのあまりの美味さゆえ、香りを嗅いだ僧侶までもが牆(垣根)を跳び越えて食べに来る」だとか。有名なのは市内の「聚春園」(東街口そば)という老舗レストランです。
・魚丸:魚のすり身の練り団子。中に肉などの餡が入っていることも。高級なものは野球ボールのように大きいです。
・茘枝肉:揚げた豚肉とジャガイモの甘酢餡かけ。茘枝は入っていません、念のため。
・紅棗芋泥:芋頭(タロ芋)をマッシュポテト状にして作るデザート。
・線麺:正式名称はよく分かりませんが、沸騰したお湯にさっと入れるだけでできあがるほどの細い麺があります。これで作った湯麺を「太平麺」と言い、旅行する人が食べると「一路平安」だとか。そのせいかどうか分かりませんが長楽国際空港のメニューにはありました。
※福州には寺院が多いので精進料理も有名のようです(鼓山の湧泉寺のものが最も有名とか)。
※あと果物は豊富で美味しいです(但しシーズンの時にしかありませんが)。桃・マンゴー・竜眼・茘枝・スイカ・蜜柑etc.
(4)福州のホテルとホテル内レストラン
とりあえず参考までに五つ星ホテルとその代表的なレストランだけ挙げておきます。なお福建師範大学にもゲストハウス(呂振万楼)があります。設備的には普通のホテルですので、師大に用事がある方はここに泊まられると便利です。場所は師大正門の前です。
◆福州香格里拉大酒店(福州シャングリラホテル)
福州鼓楼区新権南路9号/五つ星/全室ブロードバンド接続可/日本語会話可能な中国人スタッフ有
2005年開業。福州五一広場近くで交通至便。
レストラン「夏宮中華料理レストラン」(福州・広東料理)・「韓香館」(韓国料理)・「EZコーヒーショップ」(コーヒー・ケーキ)
◆金源国際大飯店(福建フォーリントレードセンターホテル)
福州温泉公園路59号/五つ星/全室ブロードバンド接続可/日本語会話可能な中国人スタッフ有
2001年開業。温泉公園および福州広場の近く。交通は便利。
レストラン「金福」(中華)・「富士山」(日本料理)ほか
◆福州西湖大酒店(福州レイクサイドホテル)
福州市湖濱路158号/五つ星/全室ブロードバンド接続可/日本語会話可能な中国人スタッフ有
1988年開業、2004年改装。西湖畔にある。市内中心からはやや遠いが福建省博物院やイスラム公墓には至近。省政府系のイベントは大体ここで開催される。
レストラン「京華閣」(中華)・「八重桜」(日本料理)など
◆福州温泉大飯店(福州ホットスプリングホテル)
福州市五四路218号/五つ星/大部分室ブロードバンド接続可
1986年開業、1998年改装。五四路あり交通至便。バスルームでは温泉水の利用も可能。
レストラン「広東庁」(中華)・「江戸屋」(日本料理)など
(5)その他の福州情報
・温泉:福州市内は温泉地帯。大きいホテルでは温泉水でお風呂に入れます。
・閩劇:福州地方の民劇。廟などで老人達がよくビデオを見ています。福建省博物院に詳しい展示があります。
・特産品:
寿山石(判子や彫刻など。赤みが掛かった石で、血を彷彿させるとかで日本人にはあまり人気がないようです)
角櫛(水牛の角で作る櫛。お土産には手頃)
脱胎漆器
福州紙傘
などなど
※食品はジャスミン茶・竜眼・茘枝など。
3.参考巡検スケジュール
・私が(企画段階から)参加した科研の調査旅行の巡検スケジュールをあくまでも参考までに挙げておきます。どちらもかなりの強行軍、かつ現地の研究者の方々に同行していただいています。琉球関係の史跡は相当マニアックな場所が多いため、場所によっては、現地でも正確な位置が分かる人は数えるほどしかいなかったりします。「場所が分からずたどり着けなかった」・「行っても門が閉まっていて入れなかった」などの事態を避けるため、できれば旅行社或いは現地研究者を通じて調査先に事前の場所確認や(調査地点への)連絡をしておいた方がいいと思います。特に入場料を取らない史跡で、管理者がわざわざ時間を作り鍵を開けるなどして待っていてくれた場合は、(ガイドさんや現地の研究者に相談の上で)謝礼をお渡しした方がよいようです。また福州に限りませんが、中国では現地ガイドや運転手への心付けは「先に」渡した方がいいようです(※その後、融通を利かせてくれたり、安全運転に努めてくれたり…と何かとスムーズに行く可能性が高いそうです)。
・と言ってもこれはあくまでも時間が限られていて失敗が許されない団体調査の場合です。実は私自身はこのサイトに掲載している多くの史跡を個人、或いは数名で突撃的に訪問しましたが、日本の常識の範囲内で礼を尽くせば(例えば私の場合は…名刺を渡して自己紹介をし訪問の目的を説明する、写真撮影や碑文調査の際は逐一許可を求める、お礼を述べる、寺院などの場合は賽銭箱に幾ばくかの寄付をする、後日撮影した写真を届ける[←これはとても喜ばれました],etc.)、特に問題はありませんでした。
◆参考巡検スケジュール1「福州における琉球史跡調査」
(某科研の調査。2001年の秋に実施)
note:奇跡のような強行軍です(しかもなんと移動時間はほぼ全てバスの中で勉強会を実施しました)。福州を熟知しているツアープランナーのT氏の全面的協力+同行・琉球史研究者の大量参加・二科研合同の資金力・現地研究者陣の甚大な支援と全行程への同行etc.により何とか実施できましたが、この密度での調査実施は相当難しいと思います…が、かなりよく考えて移動の無駄を省いたスケジュールなので、この行程をベースにすると移動はスムーズに行くかもしれません。
【福州巡検一日目】
08:40 福州温泉大飯店(ホテル)をバスで出発。
09:00 琉商会館跡
09:30 柔遠駅(琉球館)跡
10:15 河口万寿橋
10:30 河口天后宮
11:15 万寿(陳文龍)尚書廟(陳文龍記念館)
12:00 昼食
13:15 再び出発。閩江を渡って倉山区に。
13:40 天妃舎人廟(福州市倉山区)
13:50 河岸から閩海関福州衙署跡を見る。
14:28 琉球墓園
15:20 福建師範大学にて図書館見学と所蔵古籍の調査
16:30 福建師範大学閩台区域研究中心(センター)を訪問
17:20 福建師範大学学長と面会。
18:40 福州市内の金源国際大飯店内の金福中餐庁で福建師範大学主催の歓迎会
20:30 招宴、終了
20:50 ホテル到着。
【福州巡検二日目】
08:35 ホテル出発。バスで馬尾区へ向かう。
09:25 亭江鎮に到着・下車。ここよりチャーター船に乗船。
09:40 亭江鎮を出航し五虎門へ向かう。
11:35 五虎門の至近地点へ到達。
12:00 船首を返す。満潮の潮に押されて二倍速で進む。
13:09 亭江に着き下船。近くの東街村で遅い昼食(〜14時20分)。
14:30 怡山院、到着
15:40 怡山院、出発[※閩安鎮にも寄りました]
16:20 琉球金将軍、到着。
17:00 琉球金将軍、出発。
17:40-18:20 福州市内の本屋へ(新華書店)
その後市内のレストランで夕食(〜20:00)。
【福州巡検三日目】
08:00 ホテル発
09:05 謝杰の墓、到着
09:30 謝杰の墓、出発
10:00 鄭和記念館、到着
10:30 鄭和記念館、出発
11:10 文石天后宮、到着
12:05 文石天后宮、出発
12:30 蔡夫人廟、到着
12:55 蔡夫人廟、出発
13:30 顕応宮(天后宮)、到着
14:10 顕応宮(天后宮)、出発。昼食。
15:10 出発。福清に向かう。
16:40 万福寺、到着
17:20 万福寺、出発
18:20 莆田のホテルに到着
※以下、莆田・泉州と調査は続く。
◆参考巡検スケジュール2「福州における港町史跡(主に対外関係史跡)調査」
(某科研の調査。2006年の秋に実施)
【福州巡検一日目】
note:当初の予定から相当はしょりましたが、それでも結構てんこ盛りでした。
08:30 福州温泉大飯店(ホテル)を小型バスで出発。
福州清真寺
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文廟(孔廟)
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柔遠駅(琉球館)
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河口万寿橋
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河口天后宮(ただし閉門のため入れず)
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潘船浦天主教堂・番船浦跡
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琉球墓苑
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(昼食)
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伊斯蘭公墓
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福州市博物館
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17:00頃 ホテル着
【福州巡検二日目】
note:定海への道が悪く予想以上に時間が掛かってしまったのが痛かったです。あともう一日あれば、定海調査はそちらに回した方がbetterでした。郊外も含めると福州調査はやはり最低でも三日間は欲しいところです。
定海鎮
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定海で遅目の昼食(14:00ごろ)
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怡山院
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閩安鎮
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馬尾区の羅星塔
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鄭和記念館に向かうも迷子状態になり到達できず(時間も押していました)
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17:00 長楽国際空港へ(福州の空港)