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●琉球の家譜について

 

概要

琉球の家譜(系図)は、士族のみに所有が許された家系に関する記録である。1689年に王府が家臣団に対し、家譜の編集・提出を命じたことによって制度化された。当時王府は、国家を構成する社会集団の組織化を「身分制の編成」という形で推し進めており、「家譜」制度の創始はその根幹をなす施策であった。すなわち、(「君主−個人」ではなく)家という組織の束として家臣団を把握することを意図したのである。

 

各家の系図の原稿は首里城内の系図座に提出され、検閲官の厳しいチェックを経て返却された。随所に朱書きの入った原稿を二部清書して、再び系図座に提出すると公印(首里王府の印)が押され、一部は系図座に保管され、一部がその家に頒賜された。これらの家譜は五年に一度、書き継ぎ(仕次)される決まりであったが、その際にも同様の手続きが取られた。従って、琉球の家譜は王府が内容を管理・公認した「公文書」であったと言える。

 

こうして家譜が成立すると、初めに意図された士族層の把握・認定だけでなく、農民層をも確定することになった。家譜の有無は、士・農の別であったからである。系図を持つことが許された身分は「系持ち」、持てない身分は「無系」と呼ばれたが、前者がすなわち士であり、後者が農(百姓)であった(※但し琉球の「士」はすべて「文官」である)。従って家譜の持つ意味が次第に了解されてくると、無系から系持ちへの「身上がり」を願う者も増えてきた。そうした者に対して王府は、@訴後(うったえおくれ=何らかの事情により申請が遅れたとして家譜の給賜を願うこと)、A勲功(国家に対して多大な貢献を果たす)、B献金(王府への献金)の三つのケースにおいて、新家譜を与えることがあった。これにより士族となった者は「新参(士)」とされ、王府の下級士族層を形成していった。

 

 一方、士族層では、国家のイデオロギーとして儒教思想が導入されたこともあり、父系による系統認識が前面に躍り出(※琉球社会は基本的に双系社会と言われている)、門中意識が高揚していった。また門中をめぐる祭祀が次第に形成され、位牌の安置・一門の墓の造営・年間を通じての祖先祭祀などが盛んに行われるようになった。さらにエリート層としての新たな自覚が生まれ、教養や知識・学問を身につけることが尊重されるようになった。

 

なお琉球の士族は、原則的に町方(首里・久米・那覇・泊)に居住し、その居付(戸籍)によって区分されていた。家譜もこの分類に従って四系に分けることができる。家譜の各系の分類は、本島系家譜の総目録である『氏集(首里・那覇)』によって判断される。なお『氏集』とは王府の系図座に保管されていた家譜の総目録で、現存する『氏集』は内容から1850-70年代頃にまとめられたものと考えられている。その中で家譜は一番から二十番までに区分されており、一〜十五番が首里系(内、十二番は泊系)、十六〜二十番が那覇系、久米系は十七番である。成立当時は和系図の様式に近かったが、1696年頃から漢文に改められ(和系格)、18世紀後半に現在一般的に確認できるような様式(唐系格)が確立した(※但し久米系は当初から唐系格であった)。

 

 系図による身分編成は離島に対しても適用された。先島(宮古・八重山)では1729年に、久米島では1758年に家譜の編集が許可されている。但し本島の場合とは異なり、離島の士族は、本島士族とは歴然とした区別を設けた上で農民の一部である地方役人層に与えられた身分であり、またその家譜は本島の系図座ではなく地元の役所(蔵元)が管理していた。

〈参考文献〉

新城敏男「八重山の家譜覚書」『沖縄文化研究』9、1982年。

沖縄県教育庁文化課『(沖縄県文化財調査報告書第90集)沖縄の家譜』沖縄県教育委員会、1989年。

高良倉吉「琉球王国の展開自己変革の思念、「伝統」形成の背景」『岩波講座世界歴史13』岩波書店、1998年。

田名真之『沖縄近世史の諸相』ひるぎ社、1992年。

「琉球家譜の成立とその意義」(前掲書、所収)

「琉球家譜にみる中国文化・思想の影響」(〃)

「再び琉球家譜について首里系家譜を中心に」(〃)

「久米村家譜と久米村」(〃)

「首里・那覇・泊系家譜について」(〃)

田名真之「琉球家譜の成立と門中」『歴史学研究』7432000年。

〈参考資料〉※編集・発行は那覇市企画部文化振興課である。

『那覇市史』家譜資料一(資料篇1-5)、1976年(※総合)。

『那覇市史』家譜資料二(資料篇1-6)、1980年(※久米系)。

『那覇市史』家譜資料三(資料篇1-7)、1982年(※首里系)。

『那覇市史』家譜資料四(資料篇1-8)、1983年(※那覇・泊系)。

『氏集(首里・那覇)』1971年。

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